世界遺産 ムルジュガの文化的景観
ムルジュガの文化的景観は、2025年7月11日に世界遺産リストに正式登録されました。

ムルジュガの文化的景観(以下ムルジュガ)は、西オーストラリア州のピルバラ地域に位置します。この地はヤブララ族にとり、古くからの故郷です。現在、ムルジュガにはヤブララ族、ンガルマ族、インジバンディー族、マードゥドゥネラ族とウォングーットゥー族といった5つの言語グループが共に暮らしています。これらの伝統的所有者であり、土地の守護者でもある人々は、総称してンガーダ=ンガーリと呼ばれます。伝統的なンガルマ語で、「ングラ」は故郷(カントリー)を意味します。ンガーダ=ンガーリの人々が使う「ングラ」という語は、大地と海の故郷(カントリー)を指しています。
ムルジュガは全体で約10万ヘクタールの広さを有し、42の島々、小島や岩の露頭から構成されています。小さいものは2ヘクタール、大きいものでは3290ヘクタールに及びます。


ムルジュガは先住民の人々にとって、重要な文化的意義を持つ場所です。ペトログリフ(岩絵)と呼ばれる石の彫刻が、100万から200万点ほど存在すると推測されています。ムルジュガは世界で最も岩絵群が密集し、多様な岩絵が集まる場所のひとつとされています。これらの岩絵は、ンガーダ=ンガーリの人々の5万年以上にもわたる物語を語り継いでいます。
これらの岩絵には、人々の社会・生計のための活動、儀式や祭礼、動植物や複雑な精神的信仰や社会制度が記録されています。
また、天地創造の時代や何世代にもわたる先祖・土地との関わり、歴史やアイデンティティー、信仰とのつながりが描かれています。
ンガーダ=ンガーリの人々は、ムルジュガの景観を重要な物語が交錯する、生きたアイデンティティーの一部と捉えています。
彼らはこの地を訪れるにあたり、まずは到着を知らせるために「ングラ」に呼びかけ、また外部の人間を迎え入れる場合は「ングラ」と対話すると共に、敬意と文化の保全のためのルールを教えます。
西オーストラリア州ダンピア群島

ムルジュガは現地の言葉で「突き出た腰骨」と訳されます。かつては海面が現在よりも低く、約1万8000年前、ムルジュガは壮大な乾燥地帯の中で際立つ陸標として存在していました。およそ9000年前、海面が上昇し、海岸線が外側の島々まで達したことで、ムルジュガは群島となりました。そして約4000年前に現在のような群島の地形が形成されました。ムルジュガはンガーダ=ンガーリの人々にとって生きた存在であり、今もなお非常に重要な土地であり続けています。
ムルジュガの文化的景観(別名ダンピア群島)は、オーストラリア国家遺産にも登録されています。
(本ページは、オーストラリア気候変動・エネルギー・環境・水資源省のウェブページを翻訳したものです。)
本省では、ヤブララ族が世代を超え、ムルジュガ地域の伝統的所有者として大地や海を守り続けてきたことを認め、現在、共にムルジュガを守るンガルマ族、インジバンディー族、ヤブララ族、マードゥドゥネラ族やウォングーットゥー族へ敬意を表します。
彼らとムルジュガの大地及び海との長きにわたる繋がりを認め、土地を守ること、そしてムルジュガの顕著な普遍的価値を世界に発信するという寛大な姿勢に、深く感謝の意を表します。
本省はオーストラリア全域の伝統的所有者及び土地の管理者を認めるとともに、ムルジュガとその周辺の伝統的な土地や言語グループの深い文化的・精神的繋がりを尊重します。
特に、過去及び現在の長老の方々の知恵と、世界遺産リストへの正式登録を通じて紹介されるこの土地を守るための多大な貢献に、敬意を表します。