オーストラリアに3種類の「旗」がある理由
オーストラリアの国旗といえば、ユニオンジャックと十字星、大きな七稜星があしらわれたデザインが特徴です。でも、実は他に公式な「旗」が存在しています。公式の旗はそれぞれ、オーストラリアの先住民族アボリジナルの人々と、メラネシア諸島を出身地域とするトレス海峡諸島民を表しています。 オーストラリアの先住民は6万年以上もその地に居住しており、世界で最も古い生活文化を持っています。アボリジナルの旗のデザインは3色で構成されています。黒は人々を、黄色い円は太陽を、赤は大地や、大地との交霊の儀式で使用される赤褐色の土などを象徴しています。
トレス海峡諸島民の旗は水平に区切られた3つの部分から構成されています。上下の緑色が大地を象徴しており、真ん中に青色が海を象徴しています。その3つはトレス海峡諸島民を表す細い黒色の線で仕切られ、中央には「ダリ」というトレス海峡伝統の頭飾りと、海図に用いられる五芒星が、平和を象徴する白色で描かれています。五芒星はトレス海峡諸島の5つの地域と、船乗りの人々を象徴しています。
これら先住民の旗が公式に認められたのは、1994年に開かれたコモンウェルスゲームス(英連邦競技大会)がきっかけでした。アボリジナルとしての出自を持つオーストラリアのキャシー・フリーマン選手が同大会で優勝したときに、アボリジナルの旗とオーストラリアの国旗を一緒に掲げてウィニング・ランを行ったのです。アボリジナルの旗は当時まだ公式に認められていなかったため、「先住民と白人オーストラリア社会の和解の象徴だ」として、圧倒的多数の世論が彼女の行動を称えました。
これを受け、当時のオーストラリア首相であるポール・キーティング首相は国旗法を改正し、アボリジナル旗を国旗法の定める旗として指定しました。フリーマン選手は、2000年のシドニーオリンピックの開会式で聖火の点灯を行いました。その後、陸上400mで金メダルを獲得したとき、再びオーストラリアとアボリジナルの旗の両方を掲げたのです。
現在、多くの学校では、オーストラリアの国旗と先住民の旗が並べて掲げられています。オーストラリアに足を運んだときには、ぜひ注意して見てみてくださいね。